安達祐実・磯山さやか・相武紗季の3人が主演を務めるサスペンスドラマ「夫よ、死んでくれないか」
タイトルからは過激でブラックな匂いが漂いますが、実際は“妻たちの本音”を丁寧にすくい上げつつ、ミステリー・人間ドラマとしても見応えのある作品です。
三者三様の「限界」に向き合う女性たちを、3人の女優がリアルに演じ、見応えのある群像劇に仕上がっていました。
あらすじ
主人公は、大学時代の同級生である3人の女性。
30代後半を迎えたいま、誰もが人生の“転換点”に立っています。
●甲本麻矢(安達祐実)
大手デベロッパー勤務のキャリア女性。
順調だったはずの結婚生活のはずが夫・光博(竹財輝之助)との夫婦間は冷え切っている。
でも夫の不可解な失踪と不倫疑惑で一気に揺らぎ出す。
麻矢は仕事と家庭の両立が崩れ、心の支えを失いかけている。
●加賀美璃子(相武紗季)
フリーライター。
夫・弘毅(高橋光臣)の“過度すぎる愛情”が束縛となり、彼女は自由を奪われていく。離婚を考えるほど追い詰められ、結婚生活に出口を見いだせない。
●榊友里香(磯山さやか)
専業主婦で、家では夫・哲也(塚本高史)のモラハラに日々耐えている。
ある事件のあと、夫が記憶を失ったことで立場が逆転し、彼女の中に眠っていた“本当の気持ち”がゆっくりと動き始める。
──立場も状況も違う3人。
それでも共通しているのは、
「夫との関係が、もう限界に近い」という現実。
互いに悩みを打ち明けるうちに友情は再び深まり、3人はそれぞれ“壊れかけた日常”と向き合っていく。
しかしその先には、過去の事件の影・嘘と秘密・夫婦の歪みが重なり、物語はミステリーとして加速していく。
妻の本音と、クセが強すぎる夫たち
このドラマの魅力は、夫たちが単なる悪役として描かれていない点。
・モラハラ気味で支配したがり
・過度な束縛で妻を閉じ込める
・外では優しいのに、家では急に態度が変わる
・自分の弱さを理解してもらえないと不機嫌になる
“こういう人、現実にいそう…”
と思わせるリアルな夫たちの姿と、それを「どうにもできずに飲み込んできた妻たちの長年の想い」。
3人の気持ちが丁寧に描かれているからこそ、視聴者としては
「気持ちはわかる…でも危ないよ…!」
と、心の中で何度も葛藤させられます。
「そう思う気持ちもわかるけど…」の揺れる感情
本作を見ていると、とにかく揺さぶられます。
夫の行動はひどい。
妻の苦しみも痛いほどわかる。
でも、だからといって一線を越えていいわけじゃない。
その「わかるけど、でも」のラインを、ドラマは絶妙に揺らし続けてきます。
特に、“妻たちが正気と狂気のあいだを行き来する描写”は、安達祐実・磯山さやか・相武紗季の演技力あってこそ。
人は極限まで追い詰められると、「自分でも思ってもみなかった方向へ進んでしまう」そのリアリティが胸に刺さります。
一度タガが外れると止められない?
ドラマの底に流れるテーマは、「人はどこで壊れるのか」という問い。
はじめはただの愚痴。冗談。弱音。
それなのに、積もり積もったストレスと三人の連帯感が生む“妙な勇気”が加速して、
現実がゆっくりとねじれていく。
一度タガが外れると止められない怖さ。
善意と悪意、友情と依存が入り交じる人間関係。
ただのサスペンスではなく、見終わったあとに「自分ならどうするだろう」と考え込ませる深さがあります。
まとめ リアルさとスリルが同居する大人のサスペンス
「夫よ、死んでくれないか」は、
ブラックユーモア・ミステリー・夫婦のリアル・女性の友情
これらが絶妙な配分で混ざった、大人のサスペンスドラマ。
・安達祐実の繊細で壊れそうな演技
・相武紗季の強さと脆さの同居
・磯山さやかの“普通の主婦”が変わっていく怖さ
それぞれの魅力がしっかり光り、物語への没入感を高めていました。
“共感しちゃいけないのに共感してしまう”
“見てはいけないけど目が離せない”
そんな危うさがクセになる作品です。
夫たちのクズっぷりも見ものです。
オススメの1作です。

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