映画『愚行録』感想 誰も救われない物語と妻夫木聡・満島ひかりの圧倒的演技力

映画『愚行録』をAmazonprimeで観ました。
観終わったあと、心に残ったのは「誰も救われない」という絶望感でした。
重く、静かに進んでいく物語。
どの登場人物も幸せになれず、観る者にドローンとした感情を残して去っていきます。

このどこにぶつけていいのか分からない、この気持ちをこのブログにぶつけてみました!
どうぞよろしくお願いします。

映画『愚行録』のあらすじ(ネタバレなし)

ある一家が惨殺される事件が発生します。
エリート夫婦とその幼い娘が犠牲になったこの事件は、世間を震撼させ、大きな話題となります。

事件から1年後、週刊誌の記者である田中(妻夫木聡)が、事件を取材することになります。
彼は被害者夫婦を知る人々にインタビューを重ね、彼らがどんな人物だったのかを探っていきます。

ところが、取材を進めるほどに明らかになっていくのは、「完璧なエリート夫婦」という表の顔ではなく、人間としての弱さや醜さでした。
周囲の証言が食い違い、それぞれの視点から見える人物像が異なることで、だんだんと真実の姿が浮かび上がっていき、同時に田中自身の過去や家族に関わる秘密も次第に明らかになり、事件と記者・田中の人生が交錯していくことに…。

要するに、ただの殺人事件の謎解きではなく、
「人間の愚かさ」や「誰もが抱える心の闇」 を描いた作品です。

妻夫木聡さんの「無感情の怒り」

主人公を演じた妻夫木聡さんは、感情を抑えた演技の中に、奥底に潜む怒りをにじませていました。
セリフは淡々としていても、目の奥にある憎しみや諦めが伝わってくる。
感情を爆発させるわけではないのに、その冷たさが逆に強烈で、観る側はじわじわと追い詰められていくような気持ちになります。

「無感情であること」が一種の怒りの表現になっている。
その不気味さが、この作品全体を覆う重苦しい空気の要因になっていたと感じました。

満島ひかりさんが体現した「流されるしかない人生」

一方の満島ひかりさん演じる「光子」は、自分の意思を貫けない女性を体現していました。
光子は、選択肢があるように見えて実際にはなく、周囲に流されるしかない。
自我が薄く、ただ環境に押し流されていくその姿は、あまりにも切なく胸が苦しくなります。

満島ひかりさんの目の演技は本当に圧巻で、セリフ以上に「諦めと悲しさ」を表現していました。
人生を自分の力では変えられない、そんな現実を突きつけられるようで、観ていて思わずため息が出ました。

誰も救われない物語

『愚行録』には、救いや希望といった要素はほとんど存在しません。
物語が進んでも、どの登場人物も報われることはなく、むしろそれぞれが抱える闇が浮き彫りになっていくだけ。

私としては「せめて誰か一人でも幸せになってほしい」と願うのですが、その願いすら叶わず、最後までただ虚しさが残ります。
けれども、この徹底した「救いのなさ」こそが本作のリアリティであり、人間の弱さや愚かさを描き切った証なのかもしれません。

印象に残ったシーン

特に印象的だったのは、妻夫木聡さん演じる主人公が淡々と語る場面。
感情を爆発させるわけではなく、抑制されたトーンで語られる言葉が逆に胸をえぐります。
観客は「ここまで無表情に語れるのはなぜか」と考えずにはいられません。

また、光子が他人に流されていく瞬間の数々は、「なぜ彼女は抵抗しないのか」と問いかけるようで、観ているこちらまで一緒に流されてしまうような感覚になります。

本当に仕方なかったのかな。
どこかで踏みとどまれなかったのかな。
観ていてイライラしたし、でも「もしかしたら、環境が違えば私もそうなっていたかもしれない」
そんなどうしようもない無力感、絶望感が離れませんでした。

観終わったあとの余韻(一部ネタバレ感あり)

映画を観終わったあと、心に残ったのは重く沈殿するような感情でした。
カタルシスがないからこそ、余計に「人間とは何か」「愚行とはどこから生まれるのか」と考えさせられる。
まさにタイトル通り、人間の愚かさを記録したような作品です。

観た後はスッキリしません!
「謎は全て解けた」
そんな思いはありますが、でもホントに誰も救われないし、ハッピーになれません!

爽快感や希望を求める人には辛いかもしれません。
でも「人間の闇を徹底的に描いた作品」として、強烈に記憶に刻まれる映画だと思います。

まとめ

『愚行録』は、観た人の心を重くする映画です。
誰も救われず、誰も幸せにならない。けれども、妻夫木聡さんの抑制された怒りの演技、満島ひかりさんの切なすぎる存在感は圧倒的でした。

観ていて辛いのに、目が離せない。
そんな矛盾した魅力を持つ作品だからこそ、一度観たら忘れられない映画になるのだと思います。

「救いがない」からこそ心に残り続ける、そんな映画でした。
でもその救いは観た人達がどう感じ、もしかしたら私たちの隣人が「愚行録」の田中や光子、または他の登場人物かも知れない。

観たものの想像をかき立てる、そんな映画でした。
ぜひご覧になる事をお勧めします!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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