本の世界を舞台に、“嘘”と“策略”が入り混じる物語——。
映画『騙し絵の牙』は、出版社を舞台にしたエンタメ業界サバイバル。
主演の大泉洋さん、そして対峙するように存在感を放つ松岡茉優さん。
この2人の演技対決が、物語の面白さを何倍にも引き上げています。
見る者すべてが「どこまで信じていいのか」分からなくなる。
そんな“騙し合い”の中に、言葉や信念の力が浮かび上がる一作です。
あらすじ|華やかに見えて、実は裏がある出版業界
主人公・速水輝(大泉洋)は、業績不振にあえぐ出版社「薫風社」の雑誌編集長。
笑顔と軽妙なトークで人を惹きつけるが、何を考えているのか読めない存在。
そんな中、会社は大規模なリストラと再編に突入。
出版業界の裏側で、編集者、作家、経営陣の思惑が複雑に絡み合っていきます。
一方、新人編集者の高野恵(松岡茉優)は、速水のもとで翻弄されながらも、
出版という世界で何を信じ、どう生きるのかを模索していきます。
この物語、ただの業界ドラマではありません。
“誰が誰を騙しているのか”——その構図が、最後まで明かされないのです。
大泉洋「笑顔の裏」に隠された怖さ
大泉洋さんといえば、どんな作品でも軽妙なトークや独特のユーモアで
人を惹きつける魅力がありますよね。
しかし本作では、その“明るさ”が一転して“武器”になります。
速水は常に笑顔。
でも、その笑顔の裏で何かを企んでいるようにも見えます。
「この人は敵なのか、味方なのか。果たして本当の事を言っているのか」——観ている側も翻弄されてしまうのです。
彼の目の奥にある“読めない冷静さ”が、物語を引き締めています。
そして、誰もがそのペースに巻き込まれていく。
まさに、“笑顔の仮面をかぶった策士”。
不気味ささえも感じました。
この「信用できない魅力」が、大泉洋さんだからこそ成立していると感じます。
松岡茉優さんの“静かな熱”がすごい
松岡茉優さん演じる高野恵は、一見地味で真面目。
でも、その奥には彼女独特の“野心”や“信念”がしっかりと燃えてます。
大泉洋さんのようなカリスマ性とは正反対の静けさで、
確実に周囲を動かしていくタイプのキャラクターです。
上司や周りに媚びたりせず、文を読むことが好きで仕事に対して純粋でその純粋さに控えめな狂気さえも感じました。
松岡さんの演技は本当に繊細。
速水に振り回されながらも、自分の中で「何を信じるか」を見つめていく姿が
とてもリアルで、観る人の関心を惹きます。
2人の間には、まるで心理戦のような空気が流れ、
言葉に出さなくても“演技で会話している”ような緊張感があります。
観終わった後、「どちらが騙していたのか」
「どちらが本音だったのか」…と考えずにはいられません。
「信じること」がテーマの深い物語
『騙し絵の牙』は、単なる企業ドラマや業界サスペンスではありません。
テーマは“信じること”と“変化を恐れないこと”。
人は、状況や立場によって簡単に裏切るし、裏切られる。
でも、それでも何かを信じなければ前には進めない。
作中で速水が放つ言葉の一つひとつが、軽妙でありながら深い意味を持ちます。
「誰を信じるか」「何を守るか」
それは仕事でも人間関係でも、誰にでも突き刺さる問いです。
そして、観る側も同じように試されます。
「あなたは、何を信じますか?」と。
映像と構成の面白さ まるでパズルのような物語
本作は構成の巧妙さも魅力のひとつです。
序盤では何気ない会話や出来事が、
後半になると“伏線”だったと気づかされる瞬間が何度もあります。
まるでパズルを組み立てていくような快感。
エンタメ性が高く、知的な面白さもあるので、
「一度観ただけでは終われない映画」と言えるでしょう。
さらに、音楽が物語をスタイリッシュに彩り、
重いテーマでありながらテンポよく見られるのも魅力です。
まとめ “信じる”ことの難しさと希望を描いた傑作
『騙し絵の牙』は、騙し合いの中にある「人間らしさ」を描いた物語。
大泉洋さんと松岡茉優さん。
二人の演技がぶつかり合い、信じることの怖さと尊さを浮かび上がらせます。
「何を信じるか」「誰を信じるか」
その答えは人それぞれ。
でも、この映画を観たあと、少しだけ“自分の信じる力”を見つめ直したくなりました。
そして結局のところ、「他人ではなく自分の持ってるもの、好きなものを信じる。」
これに尽きるのかな。とも思いました。人をコントロールするのでは無く、自分の信じること、「私に出来ること」を愚直にやり続ける。
それが人との繋がりになっていくのかな。とも思いました。
そんな思いが、静かに心に残る作品です。
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頭を使うストーリーが好きな人
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大泉洋さん・松岡茉優さんの演技が見たい人
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「嘘」と「真実」が交錯する心理戦が好きな人
にはオススメの映画です!
映画『騙し絵の牙』
観終わったあと、「あの笑顔を、どこまで信じてよかったのか…」
そんな不思議な余韻が残る、極上のエンターテインメント。
クセのある大泉洋さん、松岡茉優さんの演技が光る作品です。

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